第3章 その傷を、、、
「悲鳴嶼さん、遅かったですね。」
いつもの河原の木陰に行くと、既に鈴音が来ていた。
「でも残念。今日はあの子来てないんですよ。」
二人が愛でている野良猫は、今日は来ていないようだ。
「、、、元気がないようだが、大丈夫か?」
唐突にそう聞かれ、鈴音は目を見張る。その後、ふわりと微笑んだ。
「悲鳴嶼さん、本当は目が見えてるんじゃないですか?」
「、、、良く言われる。」
「別に大した事はありません。少し寝不足で。」
鈴音は困った様に笑う。
「、、、夜が怖いのか?」
鬼は夜にしか行動しない。鬼に襲われた後に夜が怖く感じる人も多くいる。
「襲われてすぐの頃はそういうこともありました。ですが、今は背中の傷が疼くことがあって、それで良く寝られないんです。」
鈴音が右肩に手を置く。傷跡は右肩から左の腰の辺りまで伸びていた。
「、、、君が良ければ、その傷を診てもらってはどうか?」
「この傷を、ですか?もう十年以上前のものですよ?」
今さら良くなるとは、鈴音は思えなかった。
「君の傷を診たのは普通の医者だろう。私が紹介したいのは鬼殺隊の中にある医療施設だ。鬼の研究もしている。君のその傷が鬼によるものであれば、良くなる可能性がある、と私は考えている。」