第15章 12ページ目 弱ったときの特効薬。
助けてくれる人のいる安心感ってすごい。
これならもう問題ないし、後は待つだけなら一人でなんとかなる。
そう思って言ったのに五条くんは頷かず、むしろ眉間に小さなシワを寄せて不機嫌そうにムスッと口を尖らせた。
え、なんで?
わけがわからず首を傾げて五条くんを見つめると、ふにっと頬を軽く摘ままれる。
「まだ痛いんだろ?授業まで時間あるし、もうちょいここにいる」
「…いいの?」
「いいから言ってんだろ。お前は気にせず、ゆっくりしてればいいんだよ」
口調は少し乱暴なのに、そう言って頬を撫ぜる手の感触はとても丁寧で優しくて。
ゆっくり何度も撫でられる心地よさに、思わず擦り寄りたくなってしまって目を閉じた。
「なに、気持ちいい?」
「うん、きもちいい…」
「ふっ…素直かよ」
やわらかな息と共に吐きだされた声、それに惹かれるように目を開ける。
わぁ……五条くん…こんな顔、するんだぁ…。
豪快で楽し気な笑い顔でも、意地悪で悪戯っぽい笑みでもなく、そっと唇に優しさをのせたような微笑。
今は見えない空のような青い瞳もきっと、同じようにやわらかく細められているのだろう。
つられるようにわたしの顔もふにゃりと笑みの形にゆるんだ。
「五条くん」
「ん?」
「ありがとう」
「べつに、大したことしてねーし」
そっけない言葉と共に微笑が消えて、スッと頬から手が離れていく。
温かさが離れたことを少し残念に思いながら、椅子の背にだらりと体を預けた五条くんを目で追う。
「そうかな?わたしはすごく助かったし、心強かったよ」
「…あっそ」
「うん」
「…なら…よかった、けど」
どこか余所を向きながら、ぼそりと呟かれた五条くんの言葉はギリギリ耳に届くほど小さく。ほっとしたように空気が揺らいで、今度はわたしの心を温かくしてくれた。
えへへ、すごく心配してくれたんだなぁ。
うれしいなぁ。
五条くんって、友達思いなんだねぇ。