第14章 11ページ目 深爪したら…。
パチン…パチッ…パチンッ…
「いたっ…!」
談話室で手の爪を切っていたら、指先で爪切りが滑ってしまった。
あう、いちゃい……深爪したぁ…。
痛々しい爪になってしまった左の人差し指をじいっと見つめる。
「どれ、見せてみ?」
同じソファーの横に腰かけていた五条くんに言われ、そろっと指先を見せる。
「ん」
「うわー、血ぃ滲んでんじゃん。痛い?」
「痛い…」
じりじり、ずきずき。
見られているとますます痛みが増してきた気がして、口が思わずへの字になる。
「ふーん」
五条くんはわたしの手首をつかむと、さらに顔を近づけてまじまじと眺める。
そんなに見て、どうしたんだろう。
なにが気になるのかな?
もしかして、深爪しすぎるのが珍しい?
「五条くん…?」
不思議に思って声をかけると、五条くんはチラとこっちを見て。
それから。
さらに顔を近づけると、そのぷるんと艶めいた唇を大きく動かして。
ぱくり。
傷ついたわたしの指先を、飴を食べるかのように口に含んでしまった。
…え?
「…え?」
あまりの出来事に、思考と声が完全にシンクロする。
驚きすぎてなにも考えられず、目をぱちぱち瞬かせ。すぐ前にある五条くんの顔を見つめるも、サングラスで目が隠れていて表情がよくわからない。
ただ。
入ってる。
指が。
わたしの指。
五条くんの口の中に。
第一関節までしっかりと。
「…え?」
なんで?
頭が混乱を極める中、五条くんの歯が指を挟むように甘く噛んできた。
爪と指の間を傷口ごと温かい舌にねっとり舐められて、ズキンと痛みが走る。
うひんっ!!