第13章 10ページ目 重ねて名付けてミルフィーユ!
「いつものと違うの?五条」
「見た目は…同じように見えるね」
不思議そうに結界ボールを見つめる硝子ちゃんと夏油くんに、思わず口元がゆるんでしまう。
ふっふっふー。
ちゃんと同じに見えるように、頑張ったからね!
でも、それをサクッと一目で見破っちゃうのが五条くんなんだよなぁ。
「ああ、すげぇ数を重複させてある…よく作ったな、こんな面倒なモノ」
まじまじと結界ボールを眺めて、うへぇ…と嫌そうに唇を歪めている。
そ、そんなに面倒かな?
いや、まぁそういう風に作ったんだから反応的には正解か!
さぁそれでは、お次はお試しということで。
「ねぇねぇ五条くん」
「ん?」
「ちょっと結界壊してみて」
「えー…」
サングラスをかけ直した五条くんのお顔が全力で面倒だと伝えてくる。
目が見えなくても伝わるって、すごい。
表情筋がやわらかいというか、表現力豊かというか。
「まぁ、そう嫌がらずにちょちょっと軽く…ね?」
「ん~……仕方ねぇな」
お願いお願いっと眉を下げて懇願してみれば、意外にもあっさり引き受けてくれた。
えへへ、やったぁー!
「ありがとう五条くん。では、加減してお願いします!」
「ん、動くなよ」
集中して、明らかに雰囲気の変わった五条くん。
呪力を纏いぐっと握られた拳が、素早い動きで結界ボールをガツンと仕留める。
はたしてバリンッ!という高い音を立てて結界は壊れた………一番上の薄皮一枚ほど。
「えっ」
「今のは…」
しっかり見てくれていた硝子ちゃんと夏油くんが、驚きに軽く目を見開く。
ふっふっふー。
期待通りの反応をありがとう!
わたしの口元は、驚いてくれた嬉しさで再びゆるゆるになる。
五条くんは予想の範疇だったのか、やっぱりな…とばかりに面倒くさそうに息を吐くだけだったけど。