第11章 8ページ目 腹時計はとつぜんに。
「ゆびきりげんまん、仲直りしないとケーキいっぱい奢らされる!」
なんだその歌?とおかしさを指摘されても、いいの!と強引に最後まで歌い上げる。
「ゆーびきーった!」
「ん」
「これで仲直りだよ」
えへへと笑って言えば、面倒くさそうにわかったと答える五条くんの口端はわずかに上がっていて。
ゆっくりほどかれて離される小指が、それまであった違う体温がなくなることが、ほんの少し寂しく感じた。
なんでだろ……五条くんの指が熱かったから?
だから、指が急に寒くなったのかな…?うーん…。
「さて、仲直りが終わったところで今日の授業は終わりとする。きちんと出された課題をやっておくように」
そんな夜蛾先生の言葉にハッとなって、慌ててぼんやり見ていた小指から視線をそちらへ移す。
先生は黒板をコンコンと叩いて、そこに書いてある内容を見れば確かに課題が示されている。
「それから…はしっかり昼食をとるように」
ピンポイントでわたしだけに言い残すと、先生はそのまま振り返ることなく教室を去っていった。
みんなをドッ…と思い出し笑いの渦に落として。
先生ぇっ、なんで最後にそれ言っちゃうのーーっ!!!!
それから、硝子ちゃんに後ろからぎゅっと抱きつかれて。
夏油くんからにこにこ笑みを向けられて。
五条くんのニヤニヤ意地悪な笑いを受けながら、四人仲良く廊下を歩いて食堂へと向かった。
「なに食う?」
「ラーメンあるよ」
「、もう少し待てる?」
「硝子ちゃん、大丈夫だから。さっきのはちょっとお腹がフライングしただけだから」
「あーら、ちゃんのお腹ってば随分ド派手なフライングするのねぇ。あともう少し待っててくだちゃいねー?」
「五条くんうるしゃい!」
「こら悟に、こんな所で暴れない。あ、野菜も入れようか」
「チーズは?つまみ用のあるけど」
「なに、硝子の?いいね」
みんなでわいわい言いながら、大きなお鍋に色々ぶっ込んで闇鍋ならぬ闇ラーメンを作って。
それだけじゃ足りないって、大きさも形も様々なおにぎりをごろごろ握って。
見た目は全然きれいじゃないのに、取り分けて食べ合ったそれは今までで一番おいしい気がした。