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色んな彼図鑑

第3章 オタクリョウ


「すみませんっ・・!腕、い、いたかったですよね・・!ほんとすみません!じゃあ、ぼ、僕はこれで・・っ!!」
逃げるように彼は去っていった。

休憩が終わって、店に戻ってきた。足早に店長の元に戻る。
「休憩ありがとうございました」
お客さんぽつぽつと居る位だった。今の間に品出しを済ませておこうと、レジ横に置いてある段ボールを担いでフィギュアの棚に向かった。

ふと、斜め後ろのちょっと向こうにいるお客さんが気になった。
作業をしているふりをしてちらちら見ているとそのお客さんは商品をカバンに入れた。
(万引きだよね。)
「あの・・お客様、先ほどカバンの中に何か入れませんでしたか?」
「は、はぁっ!?いれてないわよっ!」
「いやでもその・・カバンから見えているそれって、そこの商品ですよね」
「ちがう!これは別の店で買ってきたのよ!」
頑なに認めないお客さんに困り、店長を呼びに行くことにした。

「ま、万引きは犯罪ですよ!!携帯に証拠もありますけどもっ・・!!」
声のする方を見ると休憩中に助けてくれたオタク君が居た。
「っ・・・!」
万引きを認めたお客さんは警察に連れていかれた。
「あの・・、休憩の時と、先ほどはありがとうございます」「いえ・・あのフィギュアは結構いい値段で売れるので、きっとああいうことが・・、はい」
「こちらささやかですが、お礼の品です。よければ受け取ってください」
「本当にありがとうございます」
店長から渡された商品券を渡すと、店長と私は深々とお礼をする。
「いや!っ、そ、そんな・・当然のことをしたまでで・・」
彼の顔は真っ赤だった。が、笑みも少しこぼれていた。

彼はそのあとグッズをいくつか持ってレジにやってきた。
「今日は本当にありがとうございます。あなたに助けられてばっかりでした」
「いえ・・、あなたが怪我するところを見たくないし、悪いことを見過ごすことはよくないと・・」
彼は見かけによらず正義感の強い、かっこいい人だった。
「お兄さん、かっこいいですね。」
彼の顔はものすごく赤く、はっとした私の顔も赤かった。
「あ、すみません・・っ!えと、お買い上げありがとうございます!」
「ははは、はいっ。・・あ、えと、僕はお兄さんではなくリョ、リョウと言いますっ・・!!」

『リョウ』

また彼は逃げるように去っていった。
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