第4章 ヒロトとチハル
「今日は楽しかったな~。まさかヒロトさんとチハルさんが友達だったなんて」
ブックカバーのかかった小説を眺めながら今日1日の出来事を思い出す。おしゃれな喫茶店、静かな美術館、ハラハラした映画・・・どれもこれも楽しかった。
またこんな機会があるのだと思うと楽しみで仕方がない。いつの間にかヒロトから早く連絡来ないかなと仕切りにスマホを見てしまう。
”今日は楽しかったよ。ありがとう。実はマスターから連絡があって新作のスイーツを食べてほしいらしいんだ。よければ来週とか空いているかな?”
次は来週会える。しかも、新作のスイーツも!
断る理由など無いので即返信した。
”空いていますよ。新作スイーツ、楽しみです!マスターさんとは初対面なのにいいのかな・・?”
LINEの返信では若い女性がやはり少ないらしく私の意見を聞きたく提案したとのことだった。
来週の待ち合わせ時間、場所、お出かけコース・・。実際出かけるのも楽しいけれど彼とのこのやり取りもまたとても楽しかった。あまり使わない絵文字。ビックリマーク。文面から自分が有頂天になっているのがよくわかる。
「早く来週にならないかな・・」
私はまたカバーのかかった小説を眺める。
「ななちゃん、すっかりお前の虜やん」
「なんだよそれ。けど・・お前とななさんが知り合いだったとはね」
「それはこっちのセリフや。なんや、最近大人しい思ったけどやることやっとるやん」
「そのだらしない奴。みたいな言い方はやめろよ。・・・」
「ん?どしたん?」
「来週もななさんとデート決定。お前は邪魔すんなよ」
「へーへー。ヒロト様は俺には厳しいねえ~、チハル、寂しい~」
「気持ち悪い」
「ひどっ!にしてもななちゃんもえらいのに目つけられたなぁ」