第9章 視察
衝撃の膝枕事件(大げさ?)から一夜が明けた。
「ダメだ、全っ然眠れなかった…」
はぁ〜〜〜
長ーーーいため息が出るのは何度目だろう…?
昨夜、急に私の膝の上に頭を乗せて寝転がって来た信長様は、あまりの事に私が固まっている間にそのまま目を瞑り眠ってしまわれた。
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「ちょっ、ちょっと信長様っ!?」
最初は寝たふりをしているのだと思った。
でも確認のために信長様に触るのは何だか気が引けて、頭を可能な限り動かして信長様の様子を探る。
「もしもーし?」
今思えば、もっと大きな声で言えば良かったのに、なぜか寝ていたら申し訳ないと思い小声で確認をした。
「あの、信長様…寝てます?」
少しならと思い肩をユサユサしてみるけど返答もない。
(本当に…寝てるんだ…?)
「……っ、どうしよう」
自分の手の置き場に困って、お手上げポーズのまま私は再び固まってしまう。
(早く起きてくれないかな)
顔を覗き込んでも本当に寝ているみたいだ。
それにしても…
「悔しいけど、綺麗な顔してる」
(整った顔に長いまつ毛、黙ってれば迫力イケメンなのに…)
日々意地悪が過激にエスカレートしていてドキドキハラハラさせられっぱなしで、こんなにじっくりと顔を見たことはなかった。
(まぁ、疲れてるよね)
大名ってその国のトップって事だし、戦に反乱に陰謀にと命の危険もある。私といる時の信長様はイタズラばかりをするイメージしかないから実感が湧かないけど、町の皆のイメージは完全に恐怖の大王だ。
確かに襲われそうになって助けてくれた時の信長様は、頼もしくも怖くもあった。
「だけど、それ以上に変態すぎだから…」
あまりにも無防備な寝顔に、普段されている意地悪の仕返しをしたくなってきた。
ツンツンと、頬を指で突いてみる。
「ふふっ、まだ起きない」
笑いが漏れた。
(鼻も摘んじゃお)
筋の通ったキレイな形の鼻の先を摘んだ。
キュッキュッっと、左右に動かした時…
「随分と、好き勝手やってくれるな…?」
瞼が開いて目が合った。