第7章 俺のものと言う意味
「そう…なの?」
複雑な気持ちで家紋を指で撫でてみる。
テレビの合戦のシーンとかで旗に記されてる家紋。
だから、武将=家紋みたいなイメージはあったけど、その家紋に大きな意味があると考えた事はなかった。
「これを持ち歩いてるだけで伽耶様は織田家にとって大切な人物だと言ってるようなもので、安土だけでなく織田領内ではもう誰も伽耶様に危害を加えようとは思わないよ。まぁ領地を離れたら危険だけどね」
「そう…なんだ?」
(信長様は確かに使わなくてもいいって、持っていろと言っていたけど…それは、そう言うこと…?)
「で、でもきっとそんな深い意味はないと思うよ?私が危なっかしくて迷惑をかけることが結構あったから、自分の身は自分で守れみたいな感じじゃないかな」
「ふ〜ん、まぁ伽耶様がそう思いたいのならそれでいいけど…」
「っ……」
今日はみんなの反応がとても意地悪に感じる。
「蘭丸っ!そこで何をしておるっ!」
信長様の呼ぶ声。
「わわっ、俺たちがここにいること気付かれてたんだね」
蘭丸君は軽く顔を顰めて笑ったけど、私は信長様の方を見ることが出来なくて、曖昧な笑みで返した。
「貴様は俺の小姓であろう。付く相手を間違えておらんか?」
本当によく通る声だ。少し聞いただけで信長様だと分かる低い声。
「伽耶様、俺もう行かなくちゃ。せっかく伽耶様が繋いでくれた命、粗末にできないしね」
「うん。お仕事頑張ってね」
そのまま帰ろうとした時、
「伽耶、今夜晩酌に付き合え」
よく通る声は、今度は私に向けられた。
「え、今夜は…」
(そんな気分になれないよ)
「今朝、貴様の願いを聞いたであろう?その礼に必ず来い」
「お礼って、それは強要するものじゃなくない…?」
「伽耶様心配しないで、信長様が遊女遊びをされるのは情報収集のためだから、それに俺が戻って来たからには浮気しないように俺が見張っててあげるね」
じゃあねっ!と可愛く手を振って蘭丸君は信長様の所へと走って行った。
「…っ、だから信長様が誰といたって気にしてないって言ってるのに…」
できればもう関わりたくないし、気持ちを乱されたくない。
全ては”賭け”のせい。
そう思い込む方へと私は逃げていた。