第7章 俺のものと言う意味
「伽耶、なんで指輪してねーんだよ」
布団の中で甘い余韻に浸っていると、私の薬指を見た大地が不満を口に出した。
(あ、しまった!)と心の中で思った私はとりあえず大地を納得させる言い訳を探す。
「会社のある日はしてないけど、休日はするよ?今日は休日出勤したからそれで…」
「仕事のある日もしろよ。何でしねーんだよ」
言い訳は信じてくれたものの、大地は指輪をしないことに不満を漏らす。
「だって、みんなそう言うことには目ざといから…しかも薬指になんて、その…婚約しましたみたいに思われても困るし…」
「その指にはめたからって、そんなふうに思うやつばっかじゃねぇだろ?伽耶は自意識過剰なんだよ」
婚約と言う言葉を出しても大地はその言葉に動じる事はなく、私の心はチクッと痛む。
「なくしたりしたらやだし、じゃあネックレスにして首から掛けようかな?」
本当は、もらったその日以外、その指輪をしたことはない。
だって大地が突然プレゼントしてくれた指輪には、深い意味も気持ちもなかったから…
数日前、無造作に「やる」と言って渡された小さな箱。中身を見れば指輪で…
「え?」
頭の中には、二つの可能性が浮かんだ。
一つは、付き合って一年記念のプレゼント。
もう一つは、婚約指輪。
大地はいい意味で男らしい人で、何をするにも雰囲気づくりなどはなくぶっきらぼうな人だったから、急にプロポーズ?と思ったのも本当で…
どちらにせよ急なサプライズプレゼントに(もしかして…)とワクワクきゅんきゅんしていると、大地はその指輪をケースから取り出して、私の左の人差し指から順にはめていった。
サイズは分からなかったとしても、人差し指から順にはまるかを確認する必要はないわけで、
(ああ、これは婚約指輪ではないんだな…)
と、淡く抱いた期待はすぐに消えた。
小さめのリングは私の左手薬指にしか入らず…
「おっ、ちょうどいいじゃん。この指にしとけ、なっ!」
と言って、大地は満足そうに笑った。