第6章 本職
「おはようございます」
安土に来て数日が経ち、朝ご飯を大広間で信長様達と食べることにも慣れて来た。
武将のみんなは安土にいる間は城下にある御殿に住んでいるみたいだけど、今は本能寺で起きた信長様暗殺未遂事件解明の為、連日連夜城詰で犯人探しやそれによって起こりうる反乱を鎮めるために奮闘中らしい。
「伽耶様おはようございます」
「あ、三成君おはよう」
今朝も爽やかスマイルだ。
「伽耶おはよう。草履擦れは治った?」
「あ、家康おはよう。うん、家康の薬のおかげでもう治ったよ。ありがとう」
家康は薬剤師さんの様に薬を調合出来るらしく、この間の靴擦れならぬ草履擦れの傷の軟膏をくれた。
「伽耶、今朝の味噌汁お前が作ったんだって?」
「あ、政宗おはよう。うん。自信作だから早く食べてほしくて」
そう、今日はお味噌汁を作らせてもらったから早くみんなに食べてほしい。
「朝早いのは苦手だと言っていてのに感心だな」
秀吉さんも納得しながらお椀を覗いた。
「皆揃った様だな。伽耶の顔に早く味噌汁を飲めと書いてある。食べるか」
信長様も上座から声を掛け私を揶揄う。
「はい。食べて下さい」
「いただきます」と、皆で手を合わせてご飯の時間がスタートした。
(早く早く、お味噌汁を一番に食べて)
私の視線が痛すぎるからか、それともマナーだからか、皆お味噌汁を最初に手に取り口にした。
「「「「「「!!!!!!」」」」」」
私はみんなに交互に視線を投げながら誰が一番に感想を言ってくれるかを待つ。
「あー、伽耶」
一番乗りは秀吉さんだった。
「はい」
絶対に美味しいと言ってもらえると思っている私は、期待を込めた目で秀吉さんを見た。
「…いや、美味しいぞ。まぁなんて言うか興味深い味だな」
(あれ?なんか反応微妙?まるで美味しくない時の食レポのような…)
他の人の反応も知りたくなってキョロキョロと見回すと、家康と目が合った。
「…っ、何?」
「どう…かな?」
「…別に、不味くはない」
(あれ?やっぱり微妙だ。信長様はどうなんだろう…?)
ちらっと信長様を見ると、
「そんな目で見るな、飲めんことはないが、何かが足りん」
微妙な面持ちでそう告げられた。