第30章 シークレットサンタ
あれよあれよと言う間にもう師走。
昨年は初めての事だらけで余裕がなかったけど、ここでの生活も二年目ともなると色々と考える余裕も出て来るわけで……
「しーくれっとさんた?」
「はい」
ある夜、私は信長様にあるお願いをしていた。
「初めて聞くが、それは何だ?」
私たちは寝支度を整え仲良く晩酌の最中。
「先ずは、クリスマスについて説明させて下さい」
私は、私の時代にあるクリスマスの事を大まかに説明した。
「……なるほど。本来は伴天連共が信仰する神の誕生を祝う日だが、日ノ本では恋仲が”ぷれぜんと”を贈り合い共に過ごす日なのだな?」
「はい、そんな感じです」
「ふっ、伴天連でもないのに、いいとこ取りと言うわけか…」
「うっ…、そんなとこです」
(さすが信長様、理解が早くてツッコミも的確だ)
「ただそのクリスマス、恋人たちにとってはそうですけど、子供達にとっては少し違うんです」
「ほぅ、どう違う」
「恋人同士は互いにプレゼントを交換しますが、子供のプレゼントは、サンタクロースと言うお爺さんが届けてくれるんです」
「新たな人物の登場だな。誰だそのさんたくろーすという奴は」
「彼は想像上の人物で、実在はしません。それに時代や国によって、その人物像は妖精であったり小人であったりと様々なんですが、私の時代では赤い服を着た長い白髭の恰幅の良いお爺さんってのが一般的です」
「その”さんたくろーす”がなぜ子供らにぷれぜんとを配るのだ?」
「えーっと……」
(確か、キリスト教の誰かが恵まれない子供達に何かしたってのが由来だっけ……?)
「とにかく、一年良い子にしていたら、サンタクロースがプレゼントをくれるんです」
深く突っ込まれると分からない私は、話を端折って信長様に伝えた。
「ふっ、都合の良い話だな」
「もう、そこは目を瞑って下さい。とにかく、そのクリスマスにはいろいろな行事があって、その中の一つに、シークレットサンタって言うのがあるんです」
「やっと本題に辿り着いたな」
信長様はニヤリと笑い、お酒を口に運んだ。