第28章 勝利のキス
「そうなんですね。万灯会…初めて聞きましたけど、素敵ですね…」
500年後のお盆みたいな事かなぁ。と、あまりない知識の中で言葉の意味を理解しながら、幻想的に夜空に浮かび上がる安土城と打ち上がる花火にほぅっとため息が漏れた。
「本当に綺麗」
「気に入ったか?」
「はい、とても。素敵な物を見せて頂きありがとうございます」
安土城の建っている山全体が輝いていて本当に綺麗だ。
「ならば今宵はここで過ごす。異存はないな?」
私の腰を引き寄せて信長様は不敵に口の端を上げた。
こんな素敵な景色が一望できる宿まで用意してくれて、異存なんてあるわけがない。
「……っ、異存なんて…、嬉しいしかありません」
抱きついて気持ちを伝えれば、それに応えてくれるように強く抱きしめ返してキスをしてくれる。
でも、
「ん、…待って信長様」
キスを深めようとする信長様に私はストップをかけた。
「待たんと言っておるのに、貴様も懲りんな」
目を細め不快そうな顔が、打ち上がる花火の灯りで照らし出され、またもや愛おしさが募る。
「だって私、まだ祝福の言葉を述べていません」
本当に勝ってくれたことがどれだけ嬉しいかをちゃんと伝えたいのに…
「言葉などいらん。思いは貴様のこの唇に乗せよ」
愛しい人はぷにっと私の唇を親指で押して、オレ様な笑みを浮かべた。
(もう、ホントオレ様。……でも、)
「信長様、勝ってくれてありがとうございました。大好きっ!」
漸く勝利のキスらしく、私から信長様へと口づけを落とした。
それを受け止めてくれた信長様は私の頭の後ろをガッチリと掴んで先程の続きをする様に口づけを深いものへと変えて行く。
「んっ、」
花火の音とライトアップの安土城。
そんな中でされるキスはいつも以上に甘くて感動的で、私の体を熱くして行く。
「口づけだけでは足りん。貴様の全てを寄越せ」
熱い瞳が私を捉え褥へと押し倒されると、愛しい時間に包まれた。
私の今年のお祭りはキャッスルビューの宿に信長様とお泊まりすると言う最高の形で締めくくる事ができ、また一つ、二人の素敵な思い出が増えて幸せいっぱいの中無事終了した。