第28章 勝利のキス
今年もお祭りの時期がやってきた。
【この安土で繰り広げられる祭りはどこよりも派手なものにしろっ!】
と言う信長様の考えの下、安土城下では毎年趣向を凝らしたお祭りが開催されている。
そして、そのお祭りの内容を今年はどうするかと話し合うため、本日は城下町の店の店主達や自治会長みたいな人達をお城に呼んで意見交換の真っ最中。
安土のお祭りの会場はいくつかあって、去年私がお寺の子供達と一緒に作り上げたお寺のお祭りも、今年から会場の一つとして加えてもらえる事になった為、その代表者として私も参加していた。
会議は何回かに分けて色々な事が話し合われていく中で、今回は出し物についての話し合いがなされている。
盆踊りや出店、花火や大道芸など、時間や場所を変えて一日中楽しめるようにするために、最適な方法を考え意見を出し合っていた。
そして、大まかな方向性が決まりかけた時、
「つまらんな」
魔王…もとい、鶴の一声が……!
大広間はシーンとなり、上座で脇息にもたれ掛かる信長様へと視線が一点集中した。
「ただ花火を打ち上げるだけでは昨年と何ら変わらん。練り直せ」
(おお〜、なんて上からで俺様な発言。でもカッコいいっ!)
恋人のカッコよさに見惚れていると、その恋人と目が合った。
「ふっ、どうした。退屈ならば口づけてやろうか?」
「なっ……!」
(何をサラッとこんな場でっ!)
ピューっと、口笛の音。絶対に政宗だ!
「俺たちに遠慮はいらない。してもらったらどうだ?」
そして、こんな事を言うのは決まって光秀さん。
「結構です!」
きっちりとお断りを入れて、政宗と光秀さんと信長様を、キッと順に睨みつけた!
「ふっ、頬を赤らめて睨まれても効かん」
「っ………」
恥ずかしさで一気に体温の上がった私の周りからは、クスクスと笑う声。
(うー、絶対に後で文句言ってやるんだからっ!………でも、ちょっと嬉しくて、なんか悔しいぞっ!)
言葉数で言えばたった数秒の事なのに、心音が静まるには何分もかかりそうなほどにドキドキさせて来る私の恋人は、本当に色々な意味ですごい人で困ってしまう。