第26章 恋仲修行 〜家康目線〜
「家康だけど。薬持って来たから入るよ」
襖を開けて入ると、布団に横になる伽耶と、楓の言った通り、その横に座る信長様の姿。
「家康、持って来たか。よこせ」
俺からひったくる様に薬を手にした信長様は、なぜかその薬を自らの口に含んだ。
(何してるんだ?)
「信長様?………っん」
具合が悪そうな伽耶がその行動を不思議そうに見た次の瞬間、信長様は伽耶に口づけて薬を飲ませた。
(………勘弁してよ)
楓が持って行くのを躊躇した理由はこれだ。
人がいようがいまいが、所構わず伽耶に触れる信長様の姿を見ていられないからだ。
(今川の姫として育った楓には刺激が強すぎるよな)
「これを飲んだら体を拭いてやる」
「やっ、大丈夫です。自分で拭けます…って言うか薬も自分で飲めます」
「遠慮する事はない、ほら口を開けろ」
「本当に大丈夫で…んんっ!」
熱なのか恥じらいからか、伽耶の顔はますます赤く染まる。
(あーあ、熱冷まし飲ませてるのにますます熱上げてどうするんだよ)
「口に付いておるぞ」
「えっ?」
ペロッと、薬のついた唇を舐めると信長様はそのまま伽耶に深く口づけた。
「っん、」
(さすがに熱を出してちゃ伽耶も逃げられないと分かりやりたい放題だな)
「家康」
「はい?」
(なんだ?)
見れば信長様の手がシッシッと、出て行けと合図している。
(はぁー、分かりしたよ)
「言っときますけど伽耶は病人ですからね。ちゃんと静養させて下さいよ」
「言われずとも分かっておる」
(本当に分かってるのか?)
まぁ、あの人と恋仲になろうって言うんだ。伽耶も覚悟はしてると思うけど…
それにしても、あの人をあんなにも夢中にさせる女が現れるとは思わなかったな。
伽耶の恋仲修行はまだまだ続く。