第23章 今川の姫
今日は家康の薬草の買い付けに付き合って城下町へとやって来た。
「家康どこ行くの?お店はこっちじゃないの?」
いつもの薬品店に行く道とは違う道を進んでいく家康を呼び止めた。
「いや、今日はその店に用はないから…」
家康は素っ気なく答えるとまたスタスタと進み出した。
(どこ行くんだろう……?)
お店が立ち並ぶ通りではなく、違う方へと歩いて行く。
(このまま行くと遊女屋街の方だけど…)
ここはつい最近羽目を外しすぎて秀吉さんに叱られながら帰った道だ……
あー、あれは今思い出しても恥ずかしい、信長様は終始ご機嫌だったけど、秀吉さんはとても怖くて、信長様も一切助けてはくれなかったな……
「なに、もしかして、この間酔っ払った時の事思い出してるの?」
恥ずかしい気持ち一杯であの日のことを反省していると、家康が心の中を読んだように話しかけて来た。
「そっ、そんなわけないじゃ………って、えっ!なんで知ってるのっ!?」
(家康あの日来てないじゃん!)
「秀吉さんと光秀さんに見られて噂が広まらないと思ってるならまだまだ甘いね」
家康は目を細めてしたり顔で笑う。
「う…あの日は確かに飲みすぎたって自分でも反省してます……」
「あんた、相当酷かったらしいよ…」
「いやホント、反省してますから…」
「どうだか…」
クスッと笑う家康はいつも落ち着いてるけど…
「でも、家康だって酔っ払った事くらいあるでしょ?」
武将だって人間だもの、お酒の席での失敗の一つや二つあるよね?
「……俺は…、そんな経験ないよ」
「えー、一回位はあるでしょ?
「あんたと一緒にしないでくれる?隙を見せたらやられる、俺はそう言う環境で生きて来たから、人前でみっともなく酔っ払ったりはしない」
「家康……」
何だか、叱られたと言うよりは、辛い気持ちを吐露された感じだ……
触れられたくない過去に触れてしまったような気がして、
「そうだよね。ごめんね。飲み過ぎには気をつける」
それ以上追求することをやめた。