第22章 似合わないもの【恋仲修行 〜三成目線〜】
「どこへ行く」
予想通り、信長様の腕が私を捕える。
「あの、喉が渇いたのでお水を…」
「水ならここにある」
信長様はそう言って頭上に置いてあった水差しから柄杓でお水を掬って取ると、なぜが自分で飲み出した。
(?信長様も喉が渇いてたのかな?)
次は自分の番だと思って待っていると、近づいて来たのは柄杓ではなく信長様の顔で……
「ん!」
あっという間に口を塞がれた。
「っ…」
口内に冷たさが広がり、ゴクンっとお水が喉元を抜けた。
「っは、……っ!」
な、なんて恥ずかしい飲ませ方っ!!
人生初口移しに、酔いが復活しそうな程顔が熱くなった。
「まだ飲むか?」
「も、もう十分です」
余計喉が渇いてしまった。
私の反応を見て信長様はクックックッと、さもおかしそうに笑っている。
「じゃじゃ馬め」
私の顔の横に腕を置いて信長様は私を見下ろす。
「うっ、昨夜は大変ご迷惑をおかけしました。……って言うかここどこですか?」
そうそう、裸でいるこの部屋は一体…!
「貴様があまりに泥酔して暴れるゆえ急きょ宿を取った」
「ええっ!私そんなに酔っ払って……いましたよね……」
(ああ、色々と思い出して来た…)
「ぅぅっ、重ね重ねご迷惑を…」
「まこと、面倒くさい女だ」
ああ…”面倒くさい”頂いちゃいました……
「だがそれもいい」
「え?……んっ!」
唇が重なり、そして信長様の体も私に被さる様に重なって来た……
「っ、今から……?」
(致すのでしょうか… !)
「昨夜はうるさく暴れてしかと抱けてはおらん」
「で、でももう起きる時間じゃ…」
この時代の宿にはチェックアウトタイムはないのか……?
「俺がいいと言っている。それともまだ俺への愚痴が言い足りぬか?」
言えるものなら言ってみろと、目の前の愛しい人は俺様な笑みを見せる。
「何も…大好きなだけです」
そう、大好きなだけ。
だから些細なことで怒ったりやきもちをやいてしまう。
「ふっ、それでいい」
甘い囁きが耳を掠めると、幸福と快楽で包み込まれた。
この後、宿に迎えに来た秀吉さんに道すがらずっと説教される事になるとは、この時の私はもちろん知らない……