第21章 深読み注意
「所で、そんな姿で何をしておった?」
私の作務衣姿を見て信長様は顔を顰めた。
「あ、これは…」
私は正直に今朝からの経緯を信長様に伝えた。
「……貴様はまこと俺の想像を超えてくる」
クックックッと、肩を揺らして信長様は笑う。
「信長様だって…いつも私の想像を超える誤解をするじゃないですか」
「腹が出た事を気にしておるとは思わなかったからな..」
信長様は私のお腹を指先で突いてまた笑った。
「っ、だから触らないでください」
その指先を握って阻止をすれば、逆に手を握り返されて抱きしめられた。
「無理だな。貴様を前にして触れずにはいられん」
「もう、その言い方はずるいです」
私だって、信長様とはいつも触れ合っていたい。
「それに、惚れた女も肥えさせられぬようでは男がすたる」
「そうやって私のことを甘やかし過ぎなんです。いつか豚さんみたいになったらどうするんですか?」
ブヒブヒっ!と指で鼻を押さえて豚の真似をして見せた。
「貴様なら、豚の姿も愛らしいだろうな」
チュッと掠めるだけの口づけをすると、ニッとイタズラな笑顔を見せた。
「もう、全部ずるいっ!」
送迎に餌付けに甘くて嬉しい言葉まで…
幸せすぎて心も身体もブクブクに太るばかりだよ…
「やる事が終わったのならもう天主へ連れて行っても文句はないな?」
「ありませんけど、今夜からは明かりを全て消して下さい」
「ふっ、それは聞いてはやれん」
「じ、じゃあ行けませんっ!」
逃げようとすると、そのまま抱き上げられた。
「は、離してっ」
「言ったはずだ、逃げるのは構わんが、俺の腕の中から逃げるのだけは許さんと」
「だって…、んっ」
綺麗な顔が近づいて私の唇を奪う。
「これ以上焦らせば朝日を拝む事になるが、良いんだな?」
「っ、いじわる」
本当にいじわるで、それでいてとびっきり甘い。
「明日からその”よが”とやらに付き合ってやる。とりあえず今夜は俺に付き合っておけ」
「じゃあ、信長様の作務衣も作らないとですね」
「楽しみだな」
妊娠と勘違いされたのには驚いたけど、信長様が喜んでくれた事はとても嬉しかった。
自信は今はないけど、いつかそんな日が来たらいいなと、信長様と私の子どもを密かに想像しながら、今夜もまた信長様と甘い夜を過ごした。