第15章 晩酌④
伽耶が腕の中で寝息を立てるのを確認した俺は、奴を褥へと運び布団へと入った。
だが、目をつぶっても、なかなか熱は治まらない。
「ふぅっ、これでは寝られんな」
奴の寝顔に口づけを落として、俺は一人布団から出た。
「誰か、酒を持てっ!」
伽耶を起こさぬ様廊下へと出て叫ぶ。
「はっ!」と言う声を確認した俺は部屋へと戻り、寝所の襖を閉める。
例え女中と言え、伽耶の寝顔を見せるわけにはいかん。
廻縁に出て風に吹かれている間に、酒の膳は届けられた。
その膳を手に再び寝所へと戻る。
「今宵は、貴様の寝顔を肴に飲ませてもらう」
俺の尽きない欲を受け止め続けた愛しい女は、ピクリとも動かずに深い眠りに落ちている。
俺はと言えば、未だ冷めない熱を持て余し酒を煽る事で興奮を抑える他ない。
「眠る姿も愛らしいな」
頬に指を滑らせればその寝顔が微笑んだように見え、愛おしさが募った。
「この手に抱けば、少しは治まると思ったんだがな」
だが伽耶を抱きたい欲は一日二日奴を抱いたくらいでは治まりそうもない。
そもそも、部屋に呼んで抱かなかった女も、抱くつもりであった女を三月も待ったのも初めてだ。
そして、抱いたら二度とこの女しか抱けないと思ったのも…
「阿呆だな、もう二度と俺は貴様を手放せなくなった」
手触りのいい。柔らかな奴の髪を梳いて眠る女に一人ごちる。
それでも俺は、貴様を500年先の未来へと帰してやるつもりだった。
佐助からあの言葉の意味を聞くまでは……