第2章 桃園の誓いって私がいていいんですか
朝。
天幕に陽が差し込み。
眩しさに目を薄く開ける。
「ふぁ、……よく寝た」
身体をむくりと起こし目を擦ると。
自分の横にある何かがもそっと動いた。
「ん?」
おいおいおい
劉備さん!?
なに横で寝ちゃってんのさ
てかこのひと、私に昨日―――――
「………………」
視線を自分の身体に移すも。
服は着ている。
乱れた様子もない。
自分の身体に、なにか不審な点も見当たらない。
この年で初めて、とは言わないが。
社会人になり。
休日引きこもり生活をしはじめてから
めっきりご無沙汰していた。
むしろするなら酔ってるときに
勢いの方がましかもしれない。
そんな風に思う。
「いやいや、人は選びたい………」
蜀 かあ。
特にこれって推し、いないなあ。
強いて言うなら。
諸葛亮の嫁。月英さん。
他の女性と違って美しさを売りにしていない感。
見る目あるし。頭良さそう。
「男は、………」
ふと視線を感じ、横を見る。
劉備が笑みを浮かべこちらを見ている。
「え、なにか?」
「そなたは、飽きぬな」
たった 今。ほんの少しの間に。
顔をしわくちゃにしたり。目を輝かせたり。
表情がくるくる変わる様を、眺めていたのだと言う。
「次はどんな顔を見せてくれるのかと、楽しみにしてしまう」
おお、思いのほか
クールに熱い感じか(?)
でも タイプじゃないんですよね
すみません
「キュンってしなくてごめんなさい」
「きゅ?なんと、」
「ああ~いやあ、あなたはそのうち………」
とっても可愛くて気の強いお姫様貰うから、
こんな平民 構わなくていいんですよ。
と言いたいが。我慢だな。
「そうだ、朝ですね。出発ですか」
とりあえず話を逸らし。
天幕を出ることに成功した早苗であった。