第5章 周瑜様、美しすぎるんですけど
周瑜様は。
どれだけ 忙しくても。
声を掛けると
どうしたと優しく応えてくれた。
孫策が亡くなったあとも。
なにか手伝いましょうかと言ったけど
そなたに気遣いなどさせてすまないと。
戦に出れば。厳しい顔をして。
キツイ言い方で指示することは勿論あるけど。
それは、命が懸かっているから
だってこと、みんなわかってる。
美しいだけじゃない。
いつも、優しいひと。
「大好き…―――――」
「………………」
ん、??
あれ、今 わたし。
口に、出してなかったか??
覆った手の指の間から。
ちらりと目の前の顔を覗き見る。
目を見開いて固まっておられます!
あああ~~~しまったあ!!
「あのう、周瑜様。今のは、ですね」
「私もそなたが好きだ」
…………ん?
空耳か。
いよいよ、酔いが回ったか。
「すみません、幻聴が。休んだ方がいいのかも……」
「それはいかんな」
ふわり、
周瑜は早苗を抱きかかえた。
「ええ!?」
お姫様抱っこですかあ!?
あなたは似合いますけどね、
抱えるのが私ではどうかと!
色々 頭で考えてはみたが。
下から見ても美しい周瑜に。
今くらい いいかと、黙って
連れて行ってもらうことにした。
どさりとベッドに降ろされ。
ありがとうございましたと礼を言う。
ぎし、
「え」
周瑜がベッドに手をついた。
早苗を上から、見下ろす。
「周瑜様…………?」
酔いがさめ切ってない頭で。
何事ですかと名前を呼ぶ。
「私と同じ気持ちと、……知ってしまえば」
同じ気持ち。
て、なんだっけ?
頭が上手く、働いてない。
する、
首元から肩に。手を滑らされる。
びくんと身体が動いた。
「不慣れであろうな」
今まで早苗は。
男との噂などたったこともなく。
誰に対しても、態度を変えることなく。
下人である侍女や文官。
皆に 好かれていた。
裏表のない、こざっぱりした性格が。
人を引き付けるのだろう。
「私を想ってくれていたから、なのか」
そんな健気な心の内を持っていたとは。
なんと愛おしいものか。