第3章 呂布って逃げるしかないやつですよね
董卓が、短い腕を必死で伸ばす。
不味い
私を 人質にするつもりじゃ
身体を反らし。
瞬時に腕を振り上げる。
ピタッ
槍の切っ先を。
董卓の喉元に向ける。
「大人しく掴まってたまるもんですか」
ぐぬぬ、と顔を真っ赤にして、
董卓は膝をついた。
わああああっ
「え、」
連合軍の旗が。
バタバタと、勢いよく掲げられる。
「勝利だ―――――!!」
おおおおおっ と、
まるで怒号のような声が響く。
「あ、あれ?」
打ち取ったりー!じゃないけど。
いいのか、これで。
「まあ 大将が膝ついたんだし…………」
少し首を傾げつつ。
”敵を討つ” ことをしないで
勝利したことは。
早苗にとっては、
とても嬉しいことだった。
「早苗!」
劉備が笑顔で肩を叩いた。
関羽も うむ、と頷いている。
「あっ!」
大きな声を上げた早苗に、
何事かとふたりは聞く。
「呂布だよ! あいつ逃がすと―――――」
あとで面倒なんだよ。
下邳の戦い、だったかな?
ああ、ど忘れ~~~
赤兎馬にまたがり。
急ぎ屋敷を出る。
まだ戦っている、屋敷外を
馬で走りながら。
董卓は落ちたと叫ぶ。
敵兵に、これ以上争うことは無意味だと。
伝えるために。
「呂布の逃走ルートは、」
戦場を。
赤兎馬が、駆ける。
それに乗る者は。
呂布では、なかった。
「あれは、―――――」
「なんだぁ!?」
先々に、見た顔が、ちらほら。
曹操達、孫堅達。
あっ 夏侯淵。
あんたに貰った弓で、
色々 もち直したよ。
どうもありがとう。
そんなことを思いながら。
呂布が走っていくであろう方角を目指す。
「!」
きょろきょろと。
辺りを見渡しながら。
貂蝉が文官のような男と話している。
「………………」
貂蝉は頷き。
そのまま、文官と去って行く。
呂布と、逃げないんだっけ。
ああ、シリーズありすぎて。
いまいち、どれが本当か。
わからない。
赤兎馬は、走ることを止めていた。
早苗が手綱を、
強く握るのを止めたからだ。