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虚飾の宴【R18】

第1章 松の巻




夜半過ぎから降り出した雨が廓の窓を打ち続けていた。


「また夜を明かしてしまったな。」

お大尽は乙のたわわな乳房に顔を埋めたまま云う。

寝台の周りには乙が持って来た、たくさんの玩具が散らばっていた。



「………儂は東の村の貧しい漁師の家の生まれでな、父も母も一日中漁に明け暮れていた。


兄弟も多くてな。母に甘えられるのは今日みたいな雨で時化てて漁に出られない時だけだったな。」

「……………。」

乙は何も応えずただお大尽の頭を撫で続けていた。


「………また唄ってくれないか?子守唄。」

「いいわよ。」


乙は少し掠れ気味だが暖かい声で唄い始めた。



唄い終えた後、お大尽がいきなり顔を上げて言う。

「そうだ!この間は慌ただしくてすまなかった。お前さんの名前を付けていなかったね。」


廓では初めての客が娼妓の名を付けるならわしになっているんだよ。


乙は軽く首を振った。

「いらない!あたし乙って名前が気に入ってるの、ここは「龍宮楼」でしょう?龍宮の主は乙姫、あたしは最上級の娼妓になって、いずれはここの主になるのよ!」


それを聞いてお大尽はガバリと起き上がった。


「気に入ったあ!!」

「………!?……」


「気に入った、ますます気に入ったぞ乙。

儂はどんな世界でも気概がある奴が大好きでな。
この儂がそうであった様にどん底からでも這い上がってこようとする者は応援したい!

まあ儂には金を出すことくらいしか出来んが。
あとはお前さん次第だ。」



――――立派なことでもおむつ姿で言うのはだいぶ滑稽だね。


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