第7章 夢の中の人は。
?「ダメじゃないか、呪力をこめないと。
もしこのまま死んだら醜い姿に生まれ変わってしまうよ?」
死体があちこちに転がる悲惨な状況の中、何ともこの場に似つかわしくない優しい笑顔を浮かべた人物がこちらに向かって歩いてくる。
「ーーー驚いたな、君が祓ったのかい?
八雷神って一級呪霊がいると聞いて取り込もうと足を運んだが、、どうやら無駄足だったようだね。」
その人は私の目の前まで来ると目線を合わせるようにかがみ込み、ナイフをそっと取り上げた。
『・・・死にたい。私もお母さんのとこに行きたい…』
目線を合わせず、ただ小さく呟く私にその人は白いハンカチを取り出すと私の手首に巻きつけた。
じわり、と白いハンカチが赤く染まっていく。
?「君も私と同じ、この世界に絶望してしまったんだね。
もし君が望むなら私と家族になり、これから作ろうとしている世界へ連れて行ってあげるよ?一緒に来るかい?」
私はようやくその人と目を合わせた。
着物のようなものを身につけた男の人は私の頭に手を当てると優しく撫で、切長の目をスッと細めた。
『・・・・家族になる?私と…?』
?「ふふっ、そうだよ。新しい世界を作るには新しい家族がいるだろう?」
その時、女の人の声が聞こえた。
「夏油様⁈そんな小汚い子、嫌ですよ⁇
術師と言えど、その子からは微かにしか呪力は感じません!
それに今にも死にそうじゃないですか。
人が来る前に早くここから離れましょう。」
綺麗な服を着た女の人は、少し離れた場所から私を見下すような目つきで見ている。
夏油、と呼ばれた人は眉を下げ肩をすくめると、
「すまないね、家族に反対されてしまったようだ。
でも君がこの先も術師を続けていれば、いずれきっとまた会う事になるだろうから、その時に返事を聞くとしよう。」
フッと笑みを溢し、その人は背を向け歩いて行ってしまう。
『・・・ま、待って、、置いていかないでっ‼︎』