第17章 揺れる。
フッと柔らかい笑みを浮かべた夏油さんが庭の方から現れ、私は軽く会釈をした。
「隣、座ってもいいかな?」
『ーーーはい、どうぞ。』
夏油さんはこうして時々様子を見に来てくれる。
私達は縁側に座り、陽が傾き始めた空を眺めた。
カァーカァーとカラスが鳴きながらオレンジ色の空を飛んでいる。
「顔の傷、跡にならなくて良かった。」
『あぁ、、、そう、ですね…。』
「ん?鏡で自分の顔すら見ていない口ぶりだね。
それにまた少し痩せたようだけど、ちゃんと食事は摂っているかい?」
『・・・・動かないのであまりお腹、空かなくて…。』
元々細身だったの身体はさらに痩せ、睡眠も充分ではないのか目の下には隈も浮かんでいた。
顔や身体の怪我は治ったというのに、から生気を感じられなかった。
そんな彼女の姿を見た夏油は、困ったように短く息を吐くと、
「ーーー時折此処に来てと穏やかな時間を過ごすのも案外気に入ってたんだけどね。
さすがにこれ以上は見過ごせない。
、私と共に来るかい?」
『・・・・・』
どう返事をしていいか分からず黙っていると、夏油さんは私の瞳の奥をじっと見つめた。
「こんなに傷付いた君を見るなら、あの時、8年前に攫っておけば良かったと、後悔してるんだ。
あの日と同じ、今のは絶望に満ちた瞳をしているよ。」