第14章 夏の終わりに。
一歩間違えれば怪我をしそうな光景に最初はヒヤヒヤしていたけど、皆んなの楽しそうに笑う姿に自然とつられて、私も口元を緩め眺めていた。
そんな私の隣へ憂太君がやって来て、
「さん、一緒に線香花火やらない?」
その手には線香花火が握られていた。
『うん。やりたい…!』
私達はその場にしゃがみ込み、線香花火の先に火を点けた。
ジーーッと音が鳴り、次第にパチパチと火花が散る。
『トレーニングで疲れてるのに、花火用意してくれたの?』
「ホントは僕と狗巻君で買いに行く予定だったんだけど、ちょうど門のトコで五条先生と会って。
事情を話したら…伊地知さんに連絡して買いに行ってもらってた…」
眉を下げ、申し訳なさそうに笑う憂太君。
『そうだったんだ…。じゃあ今度伊地知さんに会ったらお礼言わないとだね。』
火花はやがて柳の木のように枝垂れし、細く柔らかくなる。
儚げな火花をじっと見つめていると、
「・・・さん、何か悩んでない?」
え?と顔を上げると真剣な表情の憂太君と至近距離で目が合った。
思わずドキッとしてしまい、咄嗟に手元に視線を戻す。
『な、、何で?別に悩んでないよ…?』
「・・・気のせいかもしれないけど、距離を取ろうとしてるように感じて。」
『・・・・。』
火花が徐々に小さく弱くなり、火玉が揺れる。