第13章 表と裏
薄く開いたその瞳から一筋の涙が溢れた。
その姿があまりに儚くて綺麗で、、、胸がトクンと音を立てた。
「ーーー、、さん、、?」
静まり返った医務室で、聴こえてしまうんじゃないかと思うほど、音を立てる心臓、、、
待ち望んだこの瞬間に、なのか…
それとも、、、
『・・・・ゆ、、、た、、くん、、?』
さんはベッドの傍にいる僕に気付き、小さく掠れた声で呟いた。
「ーーーーうんっ、、意識戻って良かった…
丸3日、この状態だったんだよ。
どこか痛いとかない?
お腹の傷、、大丈夫…?」
さんは少しだけ口元を緩め、大丈夫だと言わんばかりに頷いた。
その表情に安心し、良かった…と肩を撫で下ろすと、
『・・・手、、あったかい、、、』
「手?ーーーあっ、、ご、、ごめんっ!」
手を握っていた事をすっかり忘れていて、慌ててパッと離した。
『・・・・今日、、今だけ、、、手、、握ってて欲しい、、、』
「ーーーえ?」
さんの瞳が不安げに揺れ、今にも泣き出しそうに見えた。
僕は再び白く冷たい手を取り、今度はそっと包み込むようにして握った。
「大丈夫だよ…だから安心して休んで?
明日、皆んなを驚かせよう。」
さんは切なげに眉を下げ微笑むと
『ありがとう…』と呟き再び目を閉じた。
しばらくして寝息を立て始めたさんの寝顔は少しあどけなくて、、
繋いだ手は先程よりもほんのりと温かくなっていて、生きてるんだと実感出来た…。
ーーーーそうだ、先生と家入さんに知らせないと…
頭ではそう思うのに、ここ何日かの寝不足が祟って睡魔が一気に襲ってきた。
その夜は久しぶりに朝までぐっすり眠る事が出来た。