第13章 表と裏
「・・・今日、五条先生が帰って来たよ。
相変わらずテンション高くて…いつもなら皆んな色々言うのに、やけに大人しいから五条先生も拍子抜けしてたよ…。」
細く白い腕には点滴が刺してあり、今はこれが彼女の命を繋いでいると思うと、キュッと胸を締め付ける。
「ーーーあんまり長いこと休むと、またトレーニングが大変だよ?
またしばらくは毎日筋肉痛だね…」
ははっ、と乾いた笑いが虚しく響く。
長い睫毛が影をつくり、小さく控えめな口元は閉じられ、色を失った唇は乾いてしまっている…
ふと、数日前の、さんの嬉しそうな顔が脳裏に浮かんだ。
頬を赤らめ、口元を綻ばせる彼女は、初めての外出許可を貰い親友に会いに行ける!と嬉しそうに話していた。
ようやく笑顔が戻って前を向いて歩き始めていたのに…。
この残酷な現実に、僕は顔を歪め拳を握った。
「ーーーッ⁈」
その時、僅かに彼女の呪力が触れたのを感じた。
咄嗟に布団の上に置かれた手を取り、両手でぎゅっと握りしめる。
「さんっ‼︎」
小さく白い手は驚くほど冷たかった。
その手首には痛々しい傷跡が残っている…
「・・・また、、笑った顔、、見せてよ、、」
そう心から願った時、固く閉じていた目が薄く開いた。