第12章 幻覚か現実か。
「・・・、、さん、、?」
男を冷めた目で見下ろしながらも口元には薄っすら笑みを浮かべているその猟奇的な表情に、目を疑った。
「、ナイフ渡してそいつから離れろ。」
真希さんが手を伸ばし、ナイフを渡すよう説得する…けれど、、
『邪魔、すんな。誰か一歩でも動いた瞬間、コイツの喉、切り裂くから。』
彼女はこちらに目線を合わす事もなく、じっと男を見下ろしている。
嘘でもハッタリでもない…
彼女は本当にやるだろう。
緊迫した空気の中、
狗巻君にチラリ、と視線を送ると狗巻君もそれに気づき、コクッと小さく頷いた。
もどかしさからチッ、と舌打ちをする真希さんに、
「真希さん、大丈夫。さんを人殺しにはさせない。」
「ーーー明太子。」
口元を露わにしている狗巻君に真希さんが気付きフッと鼻を鳴らした。
「・・失敗、すんなよ?」
「うんっ。」「しゃけ。」
さんは僕達の方をチラリと確認してから再び男を見下ろすと、
『で?お前らは何しようとしてた?コソコソ遺体運んで。
言わなきゃ耳、片方ずつ切り落としてくよ?』
「い、遺体は返すっ!だから殺さないでくれっ‼︎」
怯えた顔で懇願する男の鼻筋は曲がり、ダラダラと血が流れている。
さんは狂気に満ちた顔で手にしたサバイバルナイフを手の中でクルッと回転させると、それを男の耳にあてた。