第9章 【呪術廻戦】0軸の短編(世界融合設定8)
五条さんの筋肉質な腕、かたい胸板、ダイレクトに伝わる鼓動、体温…
背中と腰にまわっている手は大きくて、ごつごつしていて、温かくて…
全身が五条さんの香りに包まれて熱い、のどが渇く…
「五条さん…」
「ん、なーに?」
うあ、近いから吐息が頭に当たってくすぐったい。
ちょっとくぐもった感じの声が色っぽい。
「…もし鼻血が出たらすみません」
「ン゛ふっ……はぁ…こんな時にそれ言う?」
「いや、こんな時だからですよ」
「ハハッ、どんだけ鼻弱いんだよ」
「私の鼻が弱いんじゃなくて、五条さんの魅力が強すぎるんです」
――ドキドキしすぎて早死にしそう。
そう言えば一瞬の間の後、ぎゅっと強く抱きしめられた。
同時に口からぐぇっと蛙が潰れたような声が漏れる。
ちょ、苦しっ…それに今すごく変な声出た、恥ずかしいっ!!
思わず恨みがましい声で五条さんの名前を呼んでしまったのも仕方がない。
「ごめんごめん…でも、君も悪いからね?こんな状況で男を煽るようなこと言うもんじゃないよ。本当に襲われても文句言えないから」
「あ…はい、それは……すみません、気をつけます」
真面目な声に諭されて、確かにそれはそうかもしれないと素直に謝ってしまった。
五条さんが私を相手にする筈ないからといって、つい気を緩めすぎたみたいだ。
謝ったことで納得したらしい五条さんは、しかし私を放す気はないらしく。
「じゃあ、できるだけ鼻血出さないようにね」
「気をつけます」
「おやすみ、夢主」
「おやすみなさい、五条さん」
寝心地良いように私を抱え直した五条さんと挨拶を交わし、そっと目を閉じる。
ドキドキしている心臓を意識しないように、ゆっくり呼吸を繰り返す。
不意にトン…と背中に温かな掌が当てられた。一度熱が離れて、また触れる…トン。
止むことのないトン…トン…という優しく規則正しいそれに、だんだん眠気が誘われる。
ああ、私が寝かしつける側のつもりだったのに、なぁ…。
五条さんは何も言わず、ただ静かに私の背中をやわく叩き続ける。