第9章 【呪術廻戦】0軸の短編(世界融合設定8)
「それじゃあ、私は送ってはやれないけれど…気をつけて帰るんだよ」
「…はい。夏油さんも、どうぞお気をつけて」
そう普通に返事をしただけなのに何故かきょとんとされて。
こちらも不思議に目を瞬かせれば、君に心配されるとは思わなかった…と、おかしそうに笑われた。
あーはいはい、心配してごめんなさい。
もう帰るよ、帰りますよ。
「さん」
ちょうど背を向けたところで名前を呼ばれ。
今度はなんだと体ごと振り返れば、すでに少し離れたところにいる夏油さんが真っ直ぐにこちらを見ていた。
はじめて見る真剣な表情に息を呑むとそれはすぐに消えて。
代わりに口の端が優しく弧を描き、ゆっくりとした動きに合わせて言葉が紡がれる。
「悟のこと、頼んだよ」
その声はとくべつ大きくもないのに、不思議とよく響いて聞こえた。
心臓が変にドクドクと鳴って胸に軽く手を当てる。
視線を落として、少し苦しくなった息を意識して吸って吐く。
再び顔を上げると、もうどこにも夏油さんの姿はなかった。
なんだったのだろう…あれは、どういう…?
最後に大きな疑問を残され、頭から夏油さんのことが離れないまま帰路につき。
五条さんの家に辿り着いてからもずっと、思考の隅の方に残っていた。