第9章 【呪術廻戦】0軸の短編(世界融合設定8)
「それじゃあ…」
「あの、夏油さん」
別れの言葉が聞こえてきて、つい咄嗟に声が出た。
なんとなく、ちょっとだけ、どうしても気になるから。
「なんだい?」
問い返すその顔は変わらず穏やかだ。
けれど、その内側まで穏やかとは限らない。
余計なことを口にしていいものか、悩んで、でも気になって…躊躇いに口をぱくぱくと開閉する。
「あの…」
どうしよう、えっと、なにを言えば…。
だんだん自分でも何が言いたいのかわからなくなってくる。
夏油さんが少し困った様子で首を傾げてみせた。あ、それちょっと可愛い。
「その…」
あれほんとに何を…言いたい、思った、こと…でも、何も知らないし、余計なこと…うううわあっ、もうっ!!
「夏油さんっ…私と、お友達になってくれませんか!!!?」
私の勢いに夏油さんが目をぱちぱち瞬かせる。
「その、五条さんや家入さんとのお話も…もっと聞いてみたいし…今日、楽しかったので…」
もし、よければ…と、思いまして……。
無言でじっと見てくる夏油さんに耐えきれず、言葉が尻すぼみに消えていく。
うろうろ目を彷徨わせては徐々に視線が下がり、ついには項垂れた。
ああー言った、いやなに言ってんだ私、お友達ってなにそれぇー。
急に変なこと言い出す頭おかしいやつ認定じゃないですか、やだー。
うう、恥ずかしい…頭と胸がズキズキ痛む…。
すると、俯いた頭にぽふっぽふっと軽い重みが二回。
おそるおそる見上げると、眉をハの字に下げて微笑む夏油さんの姿。
頭撫でられた…のかな?
その顔はいったい、どんな感情なのだろう。
「君は怖がりのくせに、案外図太そうだね」
「え」
「安心したよ」
「は」
どういう意味なのかわからず、夏油さんの顔を見つめる。
図太いから安心ってなんですか。
そしてお友達発言に関しては無視ですか。
私の疑問をわかっているだろうに彼はそれには触れず、ただにこりと笑う。