第9章 【呪術廻戦】0軸の短編(世界融合設定8)
「驚かせて悪かったね。君が見えるのかどうか、確かめたくて」
今のは私が持っている呪霊だよ。
なんてことないように答える夏油さんに私の頭は混乱しきりだ。
声も出せずにいる私の様子に気づいたのだろう。
夏油さんは席に戻ると落ち着くようにと水を私に勧め、少しずつ簡単に教えてくれた。
さっきのは夏油さんの術式?で使役?している呪霊で、だから自分の意に反して勝手に動くことはないこと。
昔、東京都立呪術高等専門学校という呪術を学びつつ任務をこなす学校へ通っていたこと。
そしてそこで五条さんや家入さんと出会い、共に学び遊び過ごしていたこと。
「五条さんと家入さんと同級生って…なかなかに濃いメンバーですねぇ」
そこにこの人が入るんでしょう?いや美人しかいないよ大変。
見たかったなぁ…三人の学生時代…。
あ、写真とか残ってないのかな?見たい。すごく見たい。
「まぁ、そうだね」
悟は知っての通りだし、硝子もよくいる可愛らしい女子とは全く違ったしね。
そう語る夏油さんは遠くを見ていて、大切なものを記憶を辿っているかのように柔らかな笑みを浮かべている。
だから…
「仲が良いんですね」
素直にそう思って言ったのに。
夏油さんはハッと思い出したように私を見ると、今度は眉を歪めて苦く笑った。
「そう、だね……大切な友達だったよ」
友達、だった。過去形。なんで…そう思ったけれど、なんとなく追及する気にはなれなくて。
気まずい空気を壊すように、残っているメロンソーダのストローを勢いよくぐるぐると回した。
炭酸が一気に浮き上がってきて泡が表面でしゅわしゅわ弾けるのを眺める。
「こら、行儀が悪いよ。少し飛んだ」
優しく窘める声に向かいを見れば、もう表情を元の穏やかなものに戻しているその人。
「すみません…」
差し出された紙でささっとテーブルに弾け飛んだ泡だったものを拭いた。
面倒見がいいんだな。お世話するのに慣れているみたいな。
さっきの呪霊はびっくりしたけど、夏油さんてなんか根が真面目っぽい。
色々と考えて考えすぎて深刻になりすぎそうっていうか……うーん…なんだかなぁー、気になる人だ。
すっかり炭酸の抜けたメロンソーダだったものをごくごくと飲み込む。