第9章 【呪術廻戦】0軸の短編(世界融合設定8)
――五条悟って知ってるよね
――彼とはちょっとした知り合いなんだけど、もし都合がよければ少し君と話がしたいんだ
――なに、悪いようにはしないよ
――その先のお店で一緒にお茶でもどうだい
穏やかに、けれど有無を言わせぬ空気をまとって言われた内容に、私はただ控えめに首を縦に振ることしかできなかった。
そうして誘導されるがままに喫茶店へと入った現在、私たちは落ち着いた雰囲気のする店の奥で向かい合わせに座っていた。
彼はコーヒー、私は期間限定メロンソーダなるものがあったので気になって頼んでみた。
注文を私の分までスムーズに済ませたこの人は夏油傑と名乗った。
「それで、五条さんのお知り合いである夏油さんは、私に何のご用でしょうか…?」
注文した品が揃ったところでようやく切り出した。
知り合いと言ってもピンからキリまで様々である。
五条さん曰くの色々と面倒な事じゃなければいいなぁ。
「そう警戒しなくても、ただちょっと話がしてみたかっただけだよ」
それよりせっかく頼んだんだし、メロンソーダ飲んだら?
まるで何も含みはないかのようにさらりと言われて、本当になにもないのかもしれない…と少し気を緩める。
「じゃあ、いただきます…」
「どうぞ」
私がグラスを手に持つと夏油さんが答え、彼もカップに指をかけた。
……あ、おいしい。このメロンソーダおいしいな。さすが少しお高めだっただけはある!
内心ちょっとうきうきしていると、向かい側からフッ…と小さく吹き出す音が聞こえた。
「…なんですか」
「いや、君…よく顔に出やすいって言われないかい?」
「……いえ、それほどは」
どうやらメロンソーダで喜んでいるのに気づかれたらしい。
くっ、恥ずかしい…だって美味しかったんだもんこのメロンソーダ!!
五条さんだったらきっと一緒になって「これ美味いね!」なんてはしゃいでくれるのになぁ……いやそれもどうなんだ。
メロンソーダではしゃぐいい年した大人二人。やばいな。
恥ずかしさを誤魔化すために勢いよくストローから吸い込むと、うっかり炭酸がノドに引っかかり軽く咳き込んでしまう。
すると、やわらかい…いや固い?なにかが私の背をさするような感覚。