【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第4章 「元整備士」×「マスタングGT500」
思い出したくなくても降谷にとってあの日の光景が今でも脳裏に過る。
あの日の天気すらも、その日どんなことをしたかも事細かく言えるほどに。
ゆっくりと雨で塗れた画面を降谷は親指で拭った。その様子不安げな表情で風見は視線を向けたが、降谷の顔色に変化はなかった。
昨日の雨で消えかけた宮下の血を辿り場所を絞り出す、連絡手段のなくなった宮下がすることはおそらく近くの交番へ応援を要請するために向かうと判断した降谷は道を戻り、裏道から最短である橋へ向かった。
下には川が流れている。まるで滑るかのようように荒れた痕の付いた土手に不信感を抱きその土手を下ると橋下に先ほどとは比べ物にならないほどの血だまりを目にした風見は思わず顔色を変え口元を押さえた。確実に彼女はどこかしらを撃たれてここで寝込んでいたに違いない。それも血の量からして明らかに軽傷では済む様子ではない。
言葉を失う風見、未だ手に持っていた宮下のひび割れたスマートフォンに降谷は目を向けるとそれをなぜかハンカチに包みそのまま胸ポケットへと閉まった。
「一旦署へ戻るぞ、先に報告書だ」
冷静を装っているのは、希望かそれとも絶望か――――。