【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第3章 「元整備士」×「スバル360」
〝『公安に入らないか?』〟
降谷くんにそう言われたあの日から一週間が経過した。
昨日、降谷くんの車で自宅へと帰ってきた私はソファーで仮眠を取ったつもりが思いのほか随分深く眠っていたようで、気づけば電話のコール音で目を覚ました。
リビングには未だコール音が途絶えなく鳴り響いており、周りもいつの間にか明るくなっていた。
まずいと内心焦りながらも、『あれ、今日予約なんてあったっけ?』と寝ぼけた頭で考えながら床に落ちていたガラケーをいつもの調子で素早く手に取った。
「はい、宮下で――」
プルルルルッ、プルルルルッ
応答したはずの未だ聞こえてくるコール音にいつもの口が止まった。固定電話なんてとっくの昔に解約したはず。もしかしてボタンを押し間違えたのかと再びガラケーに目を向ければ左端に〝園外〟と表示がされている。そこでようやく私の脳が目を覚まし始める。
そうだ、昨日警視庁へ行った後閉店間際の電化製品店へ駈け込んで降谷くんとスマートフォンを買い替えに行ったんだった。
私は慌ててソファーから起き上がりダイニングターブルに置いてある保護フィルムもケースも付いていないスマートフォンを慌てて手に取った。画面にはもちろん〝降谷零〟と書かれた名前が映し出されている。
「はい、宮下です」
「お前宮下! 一体何回かけたら電話に出るんだ! 」
電話越しに響く降谷くんの怒鳴り声で音が割れ、私は思わず耳に当てていたスマートフォンを遠ざけた。
まだ、実感が湧かない。
自分が警察官へ戻ったことも。それに加えて〝ゼロ〟直属の指名で公安にノンキャリアで入ったことも。
コツコツと努力を積み重ねてきた人達が聞けばなんと思うか。それともこれも、人との繋がりが生んだ私の運命なのか。
そして今、何故私は警視庁へ出勤せず自宅にいるのか。それは降谷くんとあの出来事からの一週間にあった。