【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第2章 「公安警察」×「整備士」
四十分後、宮下の自宅の敷地に着くと一目散に家の中へと駆けこんで行った。それから庭に車を止め車内時間を潰してから約五十分、二階中央の部屋の明かりがパッとつく。アール・ヌーヴォー様式を意識させるような装飾が施された半サークル状のベランダのフェンスが部屋からの逆光でより一層独特なシルエットを映し出していた。そこからうっすらと人影が見えるとレースカーテンがバッと勢い良く開き窓ガラスがスライドした。出てきたのは黒のTシャツにワイドパンツとラフな格好でグレーのジャケットを片手に持った宮下。風呂から上がってまだ髪を乾かしていないのかしっとりとしていた。それに気づいて俺も車から降りるとベランダから宮下がジャケットを投げ飛ばす。ちょうど下にいた俺はそれを器用に受け取った。それと同時にバサッと、芝生に落ちたのはやけに厚い茶色の封筒。
「返す」
「いらない」
「前と同じ三十万は引いたから」
「もうお前の口座に入れたんだ、お前の金だ」
「そんな見合わないお金受け取れない」
「俺がそれ同等の価値があると思って払っている。て言ってどうせ返しても受け取るわけないからな、勝手に口座に入れるぞ」
俺は芝生に落ちた厚い茶封筒の前で屈み手に取ると意地でも受け取らないと言う宮下に問答無用にそう言い放つとまだ乾燥機のせいで温かいジャケットを広げそのポケットへと突っ込んだ。
「なぁ」
真っ暗な庭を小さなランタンが朧げに照らしている。
前かがみのままの体制で呟いた声は、電車のジョイント音も、ほかの車のエンジン音も聞こえてこないその場に静かに響いた。
「お前は、ずっとここにいるつもりなのか?」
そう聞けば上から声が降ってくる。「………そうね」と、小さく。
「寂しくないのか、あんな広い部屋でひとり」
「………ひとりじゃないよ」
俺は立ち上がるとベランダのフェンスに頬杖を付く宮下を下から見上げた。