【降谷零】SPARK × PUNK【名探偵コナン】
第6章 「元整備士」×「コルベットC7」
宮下が通話を放り出して、約30分が経過した。一向にミュートになった音声は解除される事はない。他のことに夢中になってしまっただろうか。
ーーいいや、やりかねないな。
通話相手であった赤井秀一こと沖矢昴は鼻で笑いながらダイニングテーブルのコーヒーカップを手に取った。
通話を始めた頃には温かかったコーヒーもすっかりと冷め切っていることに特に気に留めることはなく、通話中のスマートフォンを机に置いたまま読みかけだった推理小説を読み進めた。
一時間、二時間、そして二時間二十一分を経過した頃。ついに痺れを切らした赤井が口を開いた。
「おい、大丈夫か?」
最初に口から出たのは心配の言葉だった。返答はない。しかし、数秒してタイミングよく通話は何故か一方的に途絶えてしまった。
通信の電波が原因か。折り返し掛け直すが電話は繋がらない。かわりに画面に表示されたのは〝現在他の相手と通話中です〟というテンプレートが表示される。
一体自分の通話をすっぽかして誰に電話をかけているのか。
宮下が繰り返す謎の行動に沖矢は疑問を浮かべた。誠実で真面目な彼女が報告もなしに、一言
あくまで同じ警察官、根は腐っているはずがない。
沖矢は立ち上がり自身のスマートフォンから同じFBI捜査官であるアンドレ・キャメルの元へ電話をかける。
「キャメル、少し家を出る。何かあったら電話を寄こしてくれ」
「何か急用ですか?」
「少しな。確認程度だ、大体一時間程か――」
スマートフォンを片手にアウターと愛車のスバルのスマートキーを取り玄関を出るといつも見慣れた真っ青な空に赤井は言葉を濁らせた。
一筋の黒い黒煙らしきものが見える。
目にゴミでも入ったか。眼鏡を取って再度目を細め確認するが、確かにそれは不気味に蠢いているいる黒煙で間違いない。
「赤井さん?」
「宮下修造の家は確か、東京の離れの…山の方だったな」
「え? ええ、ちょうど桜の木が満開に咲く山道を辿ると一軒家があるそうでその家が…」
自然と山火事だという概念はなかった。
桜色に色付いた森林の一部からたつ黒煙。間違いない。赤井は確信した。