第10章 私のせい
「あっ!さーん!」
庁内の廊下を歩いていると、後ろから突然名前を呼ばれた。
「あら、由美じゃない!」
振り返ってみると、そこには交通部交通執行課の宮本由美がいた。
「知ってます?美和子のこと」
「佐藤がどうかしたの?」
「今度の日曜にデートに行くんですよ!あの高木くんと!!」
由美はキラキラした目で私にそう伝えた。
毎度毎度、一体どっからその情報を仕入れてくるのか。
「なんか、美和子の非番の日に合わせて高木くんが休暇届を出したらしくて、高木くんを取調室にぶち込んで尋問したらすぐにゲロったらしいですよ!」
「全く、そっとしといてあげればいいのに…」
どうせ、警務課から色々借りて張り込みまがいなことをするんだろうな。
佐藤過激派は恐ろしいったらありゃしない。
「で、デートの場所は?」
「新しくできたトロピカルマリンランドですって!」
「ふーん、なるほどね…
ねぇ由美、今度の日曜空いてる?」
「ええ、まあ」
「よし、一緒にトロピカルマリンランド行きましょ!」
かくいう私も、佐藤過激派の一人。
かわいい後輩のデート現場なんて、見に行かないわけにはいかない。
デートを見物しに行く気満々の私を見て、由美は「あはは…」と呆れたように笑った。
「そういえば由美、今日でしょ?東京スピリッツの優勝パレード。
こんな所に居ていいの?」
「この後すぐに行ってきますよ!
ま、駐禁の取り締まりの応援なんでそんなに焦んなくてもいいんですけどね」
路上パレードとなると、車をほっぽり出して見に来る人が大勢出るらしいから大変そうだな。
「……爆破予告のFAXが送られてきたらしいじゃない?」
「みたいですね。
一応、美和子たちも変装して警備に当たってるらしいですけど」
「やっぱり、3年前と同じ犯人なのかな」
3年前、そして7年前に爆弾テロを行った連続爆弾犯。
「似てるとは言ってましたけど、まだ分からないですよ。
ただの悪戯かもしれませんし!」
「…それもそうね」
11月になるといつも胸騒ぎがしてしまう。
次、いつ訪れるかも分からないあの悪夢を思い出して…