• テキストサイズ

【名探偵コナン】sangría

第41章 真相を知るとき



沈黙が続いたまま、車は工藤邸へと到着した。

この豪邸を拝むのももう何度目か。この屋敷の大きさには毎度圧倒されてしまう。
加えて、ここは彼の工藤先生のご自宅なのだ。何度だって慣れるわけがないだろう。


「お、お邪魔します…」


開けられた扉をくぐると、中は真っ暗だった。
やはり、工藤先生はご不在らしい。
すぐに照明がつけられ、パッと素敵な内装が姿を現す。


「客間で少し待っていてくれ」


それだけ言い残し、沖矢さんは廊下の奥へと消えていった。
言われた通りに客間へ入り、ふかふかのソファに腰掛ける。


ここに座ると思い出すのは、やはり沖矢さんの正体を暴きに来たあの夜だろう。あんなに濃ゆい日を忘れることなんて出来るまい。
その後も数多の大事件大事故が起こったが、実際はあれからまだ数か月しかたっていない。
濃密な日々と言えば聞こえはいいが、あまりに目まぐるしくて心身ともに疲労困憊だ。

ふぅーと息を吐いて、背もたれにまで体を深く預ける。




「待たせたな」


しばらくして戻ってきたのは、沖矢さんではなく赤井さんであった。
そりゃあ帰宅したんだから寛げる格好になりたいよなとも思ったが、顔と声以外は沖矢さんのまま。なんだか、急いで顔だけ解いてきたといった感じだ。


「変装、解いたんですね。沖矢さんのままでも構わなかったのに」

「…いや、素顔で話さなければ意味が無いんだ」


そう言って、翠眼を真っ直ぐこちらに向ける。
沖矢さんでは見ることの無いその緑は、なんだか少し揺れている気がした。


「……それで、私に言わなければいけないことって、なんですか」


そう切り出すと、赤井さんは1度俯いてから再び顔を上げ、徐に口を開いた。


「2人で食事に出かけた日、君は俺に同期の話をしてくれたな。覚えているか?」

「もちろんです」


おいしいワインに呑まれ、色々と饒舌に語ってしまった時のことだろう。
あんな醜態、忘れられるものなら忘れたいが。
/ 510ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp