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【名探偵コナン】sangría

第37章 ゼロの



「……?」



名前を呼ばれた。
すごく、耳なじみの良い声で。

恐る恐る呼ばれた方に顔を動かすとそこには、怪我をした片腕を庇って泥か焦げか分からない汚れまみれの、今一番会いたかった人が立っていた。



「……ぜ、ろ…」



その姿を見た瞬間、すぐに駆けだしたかった。
その胸に飛び込みたかった。

だが、1度動かなくなった足は言うことを聞いてはくれず、震えながら一歩一歩ゆっくりとゼロが立つ場所へと踏み出していく。
そんな私を見て、彼もゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。

そうしてたどり着いたその胸は、驚くほどに温かかくて、耳を添えると心臓の鼓動がしっかりと聞こえた。





「……いきてる…」



小さくかすれた声でそう零す。

直後、全身が安堵に包まれてそれと同時に力が入らなくなった。
崩れ落ちる私をゼロが片手で支えようとするが、片手が故に上手くいかず二人でその場に座り込む形になる。




「……無事、だったんだな」



その言葉に、腕を背中に回して応えた。力が入らないなりに、力強く抱きしめる。
すると「…良かった…」と息を吐くように零して、怪我をしていることも厭わず両腕で強く抱きしめ返された。




……本当は、ずっと心配だった。
サミットで爆発に巻き込まれたと知ってから、頭の片隅にはずっとゼロの安否があった。あのたった3文字では、完全に安心することなんて到底出来なかったんだ。
それでも、自分を騙して必死に数日間捜査に没頭した。だが、正直もう限界だった。

早く会いたい。会って、ゼロが生きてるって実感したい。




そうして待ち焦がれた温もりに、私は今包まれている。
鼓動が、私の耳に響いている。
目の前の大切な人は、ちゃんと生きている。


その事実が、私を解きほぐしていった。
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