第37章 ゼロの
バチッ
その時、突然警視庁内全ての明かりが消えた。
周りからは「なんだ!」「どうした!?」という困惑の声が聞こえてくる。
あまりに突然の出来事に、その場の全員が動揺していた。
「目暮警部、非常用電源が破壊されているようです!!」
「なにっ!?」
どうやら、予備の明かりは付けることが出来ないらしい。
一体今警視庁で何が起こっているのか。私を含め、誰一人としてこの状況を理解している人間はいない。
すると、バンッと勢いよく会議室のドアを開け、白鳥くんが息を切らして入ってきた。
「NAZUから報告です!!
無人探査機への不正アクセスが確認されました!!」
「なんだと!?」
「このままでは、カプセルの切り離しが出来ないようです!!」
くそっ、そういう事か…!
犯人の標的は最初からサミットではなく、同日に帰還する『はくちょう』だった。サミット会場の爆発から始まり、IoTテロで完全に警察が混乱に乗じている所を狙って本命を投下してきたんだ。
「でも待って、はくちょうの本体は大気圏で燃え尽きるはずよね?」
「あぁ。だが、カプセルの落下地点が狂っていることが判明したんだ。おかげでNAZUでは大騒ぎさ!」
犯人はカプセルの切り離しだけでなく、カプセルの落下位置まで弄ったのか。
ったく、やってくれる…!!
「で、そのカプセルはどこに落ちるの?NAZUから報告は?」
「それがまだ…」
「NAZUから最新の落下予測データが送られてきました!!」
そう言いながら、今度は高木君がタブレットを持って駆けてきた。
「場所は、東経139度45分8.405秒です!!」
「ちょっと、そこって…」
覚えのありすぎる経度。
まさかと思い、高木君からタブレットを若干無理やり奪い確認する。
「……やっぱり」
「どうしたんだね、君」
「目暮警部、大変です。
NAZUによると、カプセルの予測落下地点はここ”警視庁”だそうです!!」
「け、警視庁だと!?
4メートルを超えるカプセルがここに落下すれば、被害は想像がつかないぞ!!」
「大至急、大型人員輸送車を手配しましょう。
警視庁を中心に半径1キロ圏内で即時退避を!!」
そうして、全員が散り散りになって警視庁周辺の大型避難の任へと当たった。