第37章 ゼロの
そういえば、前にも似たような事件があったな。
確か……、そう!『NAZU不正アクセス事件』だ。あれもNorからの不正アクセスだった。
その時もNAZUの方からブラウザに脆弱性を作ってユーザーを追ったんだ。そしてたどり着いたのが、日本のゲーム会社のパソコンだった。
ここまで手口が似ることってあるか?
だが、NAZU不正アクセス事件の被疑者であるゲーム会社社員の身柄は今も刑務所にある。犯行は不可能だ。
ということは……、
「…すみません、ちょっとトイレ行ってきてもいいですか?」
「ん?よしなさい、今は捜査会議中だぞ」
「いや~、実は私絶賛便秘中でして、この機を逃したらあと一週間は出なくなっちゃうんですよ。捜査会議よりも自分のお腹の方が大事なんで、じゃ!失礼します!!」
「お、おい!!」
目暮警部が後ろで叫んでいたが、構わず会議室を出た。
会議室を出た瞬間、携帯を取り出し青柳に電話をする。
「あ!もしもし青柳!!」
「え、さん今捜査会議中ですよね?何してるんすか」
「そんなのどうでもいいから、今すぐ『NAZU不正アクセス事件』の書類持ってきて!!」
そうして無理やり青柳を呼び出し、持ってきてくれた書類に目を通した。
「…やっぱり、手口が全く一緒だわ」
「どういうことですか?」
「さっき捜査会議で爆破現場の不正アクセスに『Nor』が使われてるって報告があったの。つまり今回の犯人は、この『NAZU不正アクセス事件』と同じ方法でサミット会場のガス栓に不正アクセスし、何かしらを発火物にして爆破を起こしたのよ」
「なるほど、遠隔で操作して会場をガスで充満させたんですね。
……ちょっと待ってください、ってことは、爆破の犯人って…、」
その瞬間、フロアにあるテレビが突然ボンッ!!と音を立てて爆発した。
「わっ!?!?な、なに!?」
そして周りから悲鳴と困惑の声が広がる中、私の携帯が鳴った。
「はい…
『大変ですさん!!今、都内でいろんな電化製品が爆発していて、あちこちパニック状態みたいです!!』
電話の相手は、かなり焦った様子の佐藤だった。
「今、私の目の前でもテレビが爆発した。
一体何が起こっているの?」
『分かりません。通信指令本部もパニックで、みんなテロだなんだって大騒ぎです!!』