第4章 青い夏
「アッハッハッハッ!!ほっぺやべえ!!」
「笑うがいいさ」
お盆を含む1週間の休暇が開け、再び地獄の警察学校生活が始まろうとしていた今日、私の頬は先日とは比べ物にならないほど膨れていた。
松田が腹を抑えて笑い転げるほどに
「松田!笑ってる場合じゃないよ!!
もう、あの後ちゃんと冷やさなかったでしょ?綺麗な顔なんだから大事にしないと」
そう言ってヒロが私の頬を優しく撫でる。
そういうとこやぞ
「今日の朝の点呼どうすんの?そのほっぺじゃ、班長だけじゃなくて教官にまでどつかれるでしょ」
「大丈夫!取っておきの言い訳考えてきたから」
「どんな?」
「それは後でのお楽しみ」
______
集合!
三列縦隊!!
日朝点呼 番号!!
もう何回聞いたのか分からない、毎朝恒例のこの掛け声を合図に、前の列から順に番号を言っていく。
「、その顔はなんだ」
全員が番号を言い終わってすぐ、覚悟をしていた質問が教官からなされた。
今こそ、一晩考えた言い訳を披露する時!!
「はい!!転びました!!」
「「「は?」」」
誰もがこう感じただろう
「何を馬鹿なことを言っているんだ」と
「どんな転び方をしたら左頬だけ怪我をするんだ」
「普通に転びました」
「普通に転んで左頬だけ怪我をしたのか」
「普通に転んで左頬だけ怪我をしました」
教官の睨みをものともせず、曇りなき眼で見つめ返す私。
そう、これこそが私の考えた取っておきの奥義“堂々と嘘をつく”である。
人間は堂々とされしていれば、あたかもそれが本当かのように錯覚してしまう。のかは分からないが、一晩頭を捻っても私にはこれしか方法が思いつかなかったのだ。
「まあいい」
そう言って、教官が私の元から去っていった
やった、やった!勝ったぞ!!
私は教官との見つめ合いを制した!!
これで私も、平穏に警察学校生活を再開出来る!!
「、後で教官室へ来なさい」
「…はい……」
んなわけないか