第37章 ゼロの
「それはまぁ、災難でしたね…」
「本っ当よ!!なーにが良い経験になるだ!!面倒事を私に押し付けたいだけだろうが!!
あんのじじい、いつもは女だからどーのって私の話なんか一切聞かないくせに、こういう時だけ都合いいように使いやがって。
ていうか、こういうのって外事の仕事でしょ!?あいつら仕事しないで何してんだよ!!もうっ!!」
止まることを知らない私の愚痴。
青柳以外の部下たちは、触らぬ神に祟りなしとでも言いたげに私の話には関わらずパソコンに向き合って仕事に励んでいる。いつもはそんな真面目に仕事しないくせに。
もう、みんなまで私を腫物扱いして!本気で泣くぞ!!
「はぁぁぁぁ、これから寝る暇もないくらい忙しい日が続くんだ。もう絶望」
「まぁまぁ、俺も手伝えることがあれば手伝うんで」
「あ、青柳……!
やっぱり私にはあんたしかいないよ!」
「明日からはサミットの準備で手一杯になるでしょうから、こっちの仕事は今日中に片づけてください」
「…鬼だ」
どうやら私には味方がいないらしい。
もうこの仕事やめてやろうかな。
「ほら、ふざけたこと言ってないで早く」
「やっぱり鬼だ!!鬼!!」
「鬼はあんたでしょ。鬼才さん」
「それまじでやめて、シンプルにダサいから。たくっ、誰だよ言い出したやつ」
そんなこんなで、あーだこーだ言いながらもその日は真面目に仕事をした。えらい。
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翌日、
東京サミット警備のための特別本部が警視庁に設置されることとなり私も一時的にそちら異動しなければいけないので、今はそれに向けての必要書類の整理中だ。
「…終わんない」
「どうやったらこんなに書類まみれのデスクになるんですか」
「書類が勝手に動き出すんだよ」
「さんが定期的に片づけないからです」
はいはい、耳が痛うございます。
そのまま手に持っていた書類もデスクに広げると、うち何枚かが床に落ちてしまった。
「あぁもう何やってるんすか!!」
「ご、ごめんってば」