第35章 新曲
後日、
冷静になって考えてみると、ゼロがなぜあんなに怒っていたのかが不思議だった。寝不足で正常な思考回路じゃなかったというのもあっただろうけど、だとしても別に私と赤井さんがどういう関係だろうとどうでも良くないか?
というか、そもそも赤井さんとゼロこそどういう関係なんだ。
赤井さんの死の真相を、組織のメンバーとしてのゼロが探っていたのは知っている。それは単に組織からの命令だからだと思っていたが、それ以上に何か理由があるのか?
元同じ組織に潜入していた者同士だけではない、もっと別の関わりがあの二人の間にはあるのかもしれない。
とまあ色々考えてはみたものの答えは出るはずもなく、赤井さん本人に直接聞くのが早いだろうと電話をしたのだが……
「えぇ!?わ、私が工藤先生のご自宅を……!!??」
『あぁ、1人でこの広い家を掃除するのは骨が折れるんだ。
丁度いいからも手伝ってくれ』
予想だにしないまさかの応えが帰ってきた。
「さ、さすがに恐れ多いですよ私なんかが工藤先生のご自宅をお掃除するだなんて……!」
『そんな事を言うな。
書斎なんかは何日あっても足りないほど大変なんだ。頼む』
く、工藤先生の…書斎……だと……!?
見たい。ものすごく見たい。普段どんな所で先生が執筆されているのか、どんな場所であの名作達が生まれているのか、1度でいいから是非この目で見てみたい。
「……しょ、しょうがないなぁ!
赤井さんがそこまで言うなら手伝ってあげなくもないです」
負けた。醜い欲望に。
『ふっ、随分とあからさまに手のひらを返したな』
「あ、いや!べ、別に工藤先生のお仕事場を見てみたいとかそういった事では決して無く、ただ単純に赤井さんのお手伝いをしようと…」
『それ以上言うと墓穴だぞ。
まぁなんでもいいさ、とにかくが手伝ってくれるのならありがたい』
不純な理由だが感謝されてしまった。
まぁ確かに、あのどデカい豪邸を掃除するとなったら相当な労力が必要だろうな。
ゼロの件は、工藤邸にお邪魔した時に聞くとしよう。