第33章 純黒の
「あ、ちなみになんですけど、あの女性が警察庁から盗んだ情報について赤井さん何かご存知ですか?」
「…NOCリストだ」
「っ!?NOCリストって…」
「現在警察庁が掴んでる世界中の諜報員のリストさ」
NOCとは『Non Official Cover』の頭文字を取った略語。
政府から保護されない非公式諜報員を指す。
つまり、諜報部員が犯罪組織等に潜入する際政府とは無関係な職業を装った偽りの身分のこと。
そのリストが盗まれたということは、すなわち世界中の諜報機関の崩壊を意味する。もちろん日本も例外なく、潜入捜査をしている人間の命が危険にさらされるという事だ。
「っ、てことは、ゼロの身にも何か危険が…!?」
「あぁ。だが安心しろ、今はもう全て解決している」
「はぁ、それなら良かった…。
もしかして、その件も赤井さんが守ってくれたんですか?」
「からのお願いだからな。それに、こちらとしても彼に死なれては困る」
「……ありがとうございます」
やっぱり、私の知らないところで危険な目に遭ってて、今の私に出来ることはほんの入口だけ。赤井さんがいてくれて本当に良かった。
でもやっぱり、甘えているだけではダメだ。
今日みたいにただ傍観するだけしか出来ないなんてもう御免。
もっと調べて、私も一緒に立ち向かえるほどになりたい。
「言っても無駄だとは思うが、一応忠告しておく。くれぐれも深入りするなよ」
「……頑張ってはみます」
私の何とも言えない返答に、赤井さんは呆れたように溜息をついた。
「それで、どうする?このまま帰るのなら送っていくが」
「いえ大丈夫です。私自分の車がありますし、それにこの救急箱返しに行かなきゃいけないので」
「そうか、じゃあ気を付けろよ」
「赤井さんこそ、そのライフル他の人にバレないようにしてくださいね」
そうして私たちはそれぞれ帰路に着いた。
まるで映画のような、ありえないほどに波乱に満ちた2日間はこうして幕を閉じたのだった。