第33章 純黒の
「そうそう!その後観覧車乗ろうとしたら、元太くんがエスカレーターから落っこっちゃったの」
「えぇっ!?だ、大丈夫だったの?」
「おう!その時も姉ちゃんが助けてくれたんだ!」
「まるでスーパーヒーローみたいに壁をダダダーって走って、元太くんをキャッチしたんです!」
「かっこよかったよね!」
ダーツでは全てダブルブル。
それに、高所から落ちた子供を壁走りで助けたのか。
やっぱり、只者では無さそうだ。
「じゃあ、お姉さんが発作で倒れちゃった時のこと覚えてる?」
「うん!コナンくんと哀ちゃんに内緒で、4人で観覧車に乗ったときだよ!」
「急に頭を抑えて苦しみ出したんだよな」
「あと、その時によく分からない事を言ってたんです」
「よく分からない事?」
「はい、確か…『スタウト、アクアビット、リースリング』って」
スタウト、アクアビット、リースリング……
スタウトは色が黒く苦味が強いビールのこと。
アクアビットはジャガイモを主原料とした蒸留酒。
リースリングは白ワイン用に栽培されたぶどうの品種でありそのままワインの名称にも用いられる。
全て、お酒の名前。
ーー……もしかして、『バーボン』と同じく“組織”に何か関係があるのか…?
だとすれば、あの女性は組織の人物?
もし仮にそうだとして、警察庁から盗まれた情報とは一体何なのか?
もしかしたら、その情報が世界を脅かす程の機密事項ともありえる。
そうなれば、この世界は組織によって……!!
「さん?」
「どうしたんですか?」
「怖ぇ顔してるぞ」
「えっ!?あぁ、何でもないわ!
みんな、色々教えてくれてありがとうね。今、お姉さんを連れて来てもらうから」
その後、目暮警部に無理を言って女性を連れてきてもらい約束通り子供たちは女性と面会することが出来た。
「目暮警部すみません、私の我儘を聞いてもらっちゃって」
「まぁいいさ。本来ならば会わせるわけにはいかんのだが、彼女も子供たちには心を許しているようだから。
記憶回復の手助けになるかもしれんしな」
「ありがとうございます。
いいみんな!取調べの時間までだからね!」
「「「はぁーい!!」」」
子供たちが女性と楽しそうに遊んでいる間、私は少しだけ席を外させてもらってとある人物に電話を掛けた。