第32章 お食事
「そういえば、さんはなぜフランス語を?とても流暢でしたよね」
「ICPOの本部がフランスのリヨンにあるんです。そこになぜか警視庁勤務の私が飛ばされて、何ヶ月か働いているうちに自然と。
まあ、元々勉強はしていたのであまり苦労はしなかったんですけどね」
「なるほど、流石ですね。ちなみに全て合わせて何ヶ国語話せるんです?」
「基本は日本語英語フランス語の3つです。あとは、中国語とロシア語をあいさつ程度に齧ったくらいで」
「中国語とロシア語ですか。随分と尖ったチョイスですね」
「中国語は、犯罪件数が圧倒的に多いので話せて損は無いかと思って。
ロシア語は……同期が流暢に話していたのを見て、悔しくて勉強を始めました。
でも、どっちも難しくて途中で挫折したんですけど」
そんな、特に当たり障りのない話をしながら料理を口に運んでいった。
良い値段がするだけあってどれも最高に美味しい。そしてワインにとても合う!
おかげで飲むペースが進み、既にグラスで赤2つ白1つを飲み干してしまった。ちなみに今は3杯目の赤。
誰かさんにあんまり飲みすぎるなって言われたし、流石にこれくらいでセーブしとくか。
「さんは白より赤がお好きなんですね」
「そうですね、お酒は苦味や渋味がある方が好みです。
いつもは専ら生ビールなんですけど、最近は他にも色々手を出してて。ウイスキーの飲み比べとかしちゃったり」
「ほぉ、ウイスキーですか。ちなみにどんなのがお好みで?」
「定番ですけど、スコッチはすごく好きでした。あのスモーキーな香りはドンピシャですね。アメリカンだと、ライのあのスパイシーな口当たりは割と気に入ってます」
「中々に素敵な好みですね」
「どうも。
沖矢さんはウイスキー飲まれるんですか?」
「えぇ、ここ最近はバーボンを飲むことが多いです」
「へ〜意外。甘めのものがお好きなんですね」
「まぁ、そうですね」
「実は私も、自宅での晩酌は専らバーボンなんです。基本1人ではあまり飲まないんですけど、時々無性にあの甘さが欲しくなる時があって。
自宅にはあまりお酒は置いてないんですけど、バーボンのボトルだけは常備してます」
「……やっぱり、そうなんですね」
「やっぱり?」
すると、沖矢さんはグラスをコトリとテーブルに置いた。