第31章 緋色の
『そのマスクじゃない。
その変装を解けと言っているんだ!!赤井秀一!!』
「変装?赤井秀一?さっきから何の話です?」
なぜ、沖矢さんの声で彼がしゃべり、かつ画面の向こうのあいつと会話が成立しているんだ?
私の隣にいる彼は、一体何をしているんだ…?
『一体何を企んでいる?』
『企むとは?』
マスクをつけ直した沖矢さんが、何事も無かったかのように普通に話し出した。
『玄関先に2台、廊下に3台、そしてこの部屋には5台の隠しカメラが設置されているようだ。
この様子を録画してFBIにでも送る気か?
それとも、別の部屋にいる誰かがこの様子を見ているのかな?』
バレてる。
私でさえ気付いた監視カメラだ、流石にあいつの目は誤魔化せない。
私の隣の彼は、こめかみに一滴の汗を浮かべた。
すると、またしてもゴホゴホッと咳をする沖矢さん。
「そもそも赤井秀一という男、僕と似ているんですか?
顔とか声とか」
話し出したのは彼の方。
そうか、咳払いが合図なのか。
『顔は変装、声は変声機だろ。
今日の昼間、この近辺を回ってリサーチしたんです。隣人である阿笠博士の発明品で、評判が良かったのに急に販売を止めた物はないかってね。
それはチョーカー型変声機。首に巻けば喉の振動を利用して自在に声が変えられて、ストーカーの迷惑電話にお役立ち』
何それチョー便利!……じゃなくて。
そうか、だから沖矢さんはいつもハイネックの服を着ていたのか。それなら説明がいく。
ただ、今日限りはどうやら違うようだけど。
『そう、大きさは丁度そのハイネックで隠れるくらいなんだよ!!』
そうして沖矢さんの首周りの服を無理やり退かしたが、その首元には何も着いていなかった。
……もしかして、この状況すらも読んでいたのか?
すると、先程机の上に置かれた携帯がブーブーと鳴り出した。
すかさず電話を取る。
『どうした?遅かったな……え?』